学校の外は校舎よりずっと暑かった。
観月はなるべく日陰を通ってくれるけど、白い塀やらに反射する陽の光も強烈で、ほとんど気休めにしかならない。
「アイス何食べたい?」
ふいに観月が口を開いた。
教室を飛び出したっきりなぜか会話がなかったから、あたしは少しほっとする。
「んー、イチゴ」
「蕾らしいー」
言って、コロコロと笑う観月。繋いだ手から視線を上げてその様子を見上げると。
普通の女の子から見ても背の高い観月だから、あたしからしたらそれはそれは高い位置に顔があって。
斜め前にあるそれは、笑い声が止んでも微笑んでいた。
「アヤは?」
と。聞いてはみたものの、教室を出る時の何か言いかけた咲之助の顔がちら付いて、質問に集中出来ない。
「あたしはね、蕾っ」
散漫だった意識が途端にまとまって観月の声に反応した。
「え、今なんて」
聞き返してみる。
もしかしたら何か聞き落としたことがあって、変なふうに聞こえてしまったのかもしれない。
だって、今の流れじゃ、あたしを食べたいみたいなことになる。
