マユナの髪の毛が教卓の端にゆらゆらと現れる。
手が伸びて来て、あたしは思わずスポーツバッグを盾にするように顔を隠した。
「マユナー まだー?」
「…今行く」
マユナの顔が覗く寸前。
廊下の友達に呼ばれたマユナは手を引っ込めて教卓から離れた。
どっと肩の力がぬけて、背中がほんのわずかだけ汗で湿ってる気がした。
「今度からは教卓の下に隠れないほうがいいね。足見えてる。」
その言葉と声の冷たさにびくっとして、足を体に引き寄せ、あたしはますます縮こまった。
「バイバイ。蕾ちゃん」
言って、マユナは教室を出ると、さっきと同じくテンションの高い会話を繰り広げながら友達と帰っていった。
