「でも、咲之助くんがマユナのこと調べてる時にあの幼なじみが来て邪魔してたよ」
そんなこと、どこで見てたんだ。
全然気が付かなかった。
「えー。てか、あの女なに? ただの幼なじみでしょ?」
「だよね。なんであんなにベッタリなんだろ。」
自分のことを言われると次の瞬間には怒りが消え失せ、変わりに悲しくて大きな波に飲み込まれた。
いきなり女子たちのことが怖く思えて、スポーツバッグに顔を押し付けてぎゅっと目を瞑った。
弱くて何もできない自分に全身が支配されて途端に動けなくなる。
一人じゃなにもできない、惨めでちっぽけな自分。
つっ立ったままのあたしだけがいる教室に、女子たちは容赦なくどかどか近づいてくる。
声が教室のすぐ近くで聞こえるようになると、『絶対に会いたくない』って強く思って、逃げ込むように教卓の下に必死で潜り込んだ。
身を隠した直後、「忘れ物ー」と言いながら女子が教室に入ってきた。
気配がどんどん近付いてくる。
