あれは偶然じゃなく、咲之助を狙ってやってたことだったんだ。
スポーツバッグを抱きしめる力が強くなる。
今すぐ廊下に飛び出して「バカにするなっ」って叫びたい衝動にかられた。
「落としたい男ねー。 でも、みんながみんなマユナみたいに上手くいかないからさー」
「えー。あたしだって上手く行かない時あるよー。咲之助くんなんかあたしのこと気にしてなさそうだし」
「そんなことないって、あたし見たもん。 咲之助くんがさっき教卓の上の名簿見てマユナのこと調べてるの」
…まさか、咲之助がさっき教卓の前にいたのはそういうこと?
調べてたんだ。
“マユナ”のこと。
だとしたら咲之助は、シンデレラ作戦にまんまとハマってしまったんだろうか。
「マジでっ やったっ」
「ほーら、やっぱりマユナは百発百中女じゃん」
「ふふーん」
そんな歓喜の声を聞いた瞬間、目立つ女子に対する苦手意識も吹き飛んで、ついに教室から飛び出しそうになった。
