遠ざかってく咲之助の足音が聞こえなくなると、その足音が向かった方向とは逆の方から声が聞こえてきた。
廊下からいくつかの足音とともに聞き覚えのある女子たちの声が響いてくる。
基本学年の目立つ女子は苦手で。できればあまり鉢合わせたくない。
床にどかっと置かれた咲之助のスポーツバッグを引き寄せ、ぬいぐるみを抱くようにぎゅっと抱きしめる。
咲之助本人じゃないバッグではやっぱり頼りなくて、どこか隠れる場所はないか真剣に探した。
「でね。今日シンデレラ作戦成功したの」
「マヂでっ さすが演技派っ」
耳を澄ましていなくてもはっきりと聞こえてくるテンション高めな会話の途中、そんな話題が出た。
なんだかすごく嫌な予感がする。
「にしても、よく思いつくよね。あんな作戦。」
「だよねー。 あたしだったら思い付いても実践しないしっ」
「あははっ 咲之助くんかなり優しかったよー 今度2人も落としたい男にやってみなって」
嫌な予感はみごと的中。
この声の中に今日階段でコケてた女子がいることを確信した。
