熱のせいで思考することも出来ず。
佐伯に軽く引っぱられただけで力をなくした体は引き寄せられ、すんなりとそのキスを受け入れてしまった。




耳鳴りがして、雨の音もろくに聞こえない。

こめかみから始まった痛みは今は頭全体に広がり。
辛くて、目を瞑った。


が、体がだるくて、瞑ったはいいものの、もう二度と目を開けられない気がした。




聴覚も視覚も封じられて、感じることが出来るのは重なった唇の熱だけ。







『ココロが泣いてる』
『ココロが壊れる』




雨音の歌がふいに思い出される。

あの歌にどんな意味があったのか、今なら分かる気がした。


ココロが泣くのは、本当の気持ちを顔に表していないから。

ココロが壊れるのは、本当の気持ちを完全に諦めてしまったから。





今まさにココロが崩壊しそうで。
そんなココロが助けを求めたのは蕾だった。



けど、それ叶わないことだから、今は目の前の佐伯に引っ付いていることしかできなかった。






初めて『好き』だと思えた人。

初めて『好き』だと言ってくれた人。



人は前者を初恋と呼ぶかもしれないけれど、俺は今、後者のほうが本当の初恋だと言って欲しかった。



お前は間違ってないよって、言って欲しかったんだ。