佐伯は隣に腰を下ろすと、俺を歓迎するみたいに手を広げた。



なんとなく、佐伯が何を考えてるのか分かる気がしたが、分かりたくない自分がいた。




「え、何」


どうかそうであって欲しくないと願いながら聞くと。


「ひ ざ ま く ら」



と、語尾にハートでも付いていそうな感じで佐伯は言った。



サーと血の気が引く気がして、ぞくっと寒気に見舞われる。





「いや…」


「いやなの?」


「いや、大丈夫だから」


「つべこべ言うなっ うざいっ」


「イヤーッ」



この時生まれて初めて奇声を上げた。
ベンチに手をついて抵抗したが引っ張られ、気が付けば佐伯の膝の上にいた。





「あの、なんでこんなとこに?」




仕方なく頭を預けたまま、いつもと違った角度で公園を見渡しながらそう訊ねる。




「あんたの家に行こうとしたの」



「あはは、恐ろしいことをお考えになる」




と、丁寧に言ったはずなのに肩をひっぱたかれた。


怒りに触れたようで、これ以上口を開けず、じんじんする肩を擦りながら再び雨の音に耳を澄ませた。