「ごめん。だって…」
反省の色なんかこれっぽっちも見せないで、謝った上に言い訳しようとした。
そしたら、
「言い訳なんかいらねんだよっ」
咲之助はもっとキレた。
お得意の眉寄せ顔で、人相悪くあたしににじり寄ってくる。
「ごめん。もうしない」
そんな咲之助に、これもまた全然反省してないような平坦な声で謝った。
「お前、」
謝り方が気にくわなかったのか、咲之助はいつもの低い声とは比べものにならないくらい低い声を出した。
実に低音なその声が鼓膜を振るわせた瞬間、咲之助が手を振り上げた。
『ぶたれるっ』
そう思って、その手が降り下ろされる寸前に目をつぶる。
ばっちーんって、すごい衝撃がくるに違いない。
瞬時にいろんなことを考えて歯まで喰いしばった。
「おい」
声がした直後、咲之助の指先が目尻に触れた。
「お前、まつ毛ついてんぞ」
目を開けると、咲之助の眉間にもうシワはなくて。
力を加減しながら指先でまつ毛を取ってくれてた。
「…まぎらわしい」
「は?」
咲之助の眉間に再びシワが現れた。
ほんと、咲之助の眉間は平和な時が少ないよね。
その原因を作ってるのは、もっぱらあたしなんだろうけど。
