大人になれないファーストラバー



そして今日もようやく放課後。



あの後、咲之助は女子と並んで階段を上がって行った。



見てた様子からすると、女子が足首を痛めたとかなんとかで、咲之助の肩を借りてた。




結局あたしは話しかけるにかけられなくて、その2人の後を気付かれないように歩いて教室に帰った。








「サクー、帰ろう」




隣の咲之助の教室を覗くと、もうすっかりがらんとした状態で。


さっきまでガタガタと音を立ててた机や椅子が、今は静かにたたずんでる。


どんなに目立つ子の席だとしても、放課後になれば所詮ただの机と椅子。




だからかな。
放課後の教室がなんだか少し寂しいのは。





「あ、俺部活あるから先帰って」




そんな教室の中で、咲之助は教卓の前に立っていた。

でかいスポーツバッグを肩にかけて、何やら教卓の上にある何かを見ている。





「そっか。じゃぁ玄関まで一緒に行こうよ」



「おう。ちょっと待って」


「うん」



「…」



7秒数えてみた。




「まだ?」




「…」




5秒数えてまた聞いてみる。



「まーだ?」


「…」



今度は1秒も置かずに聞いてみようとした。



「ま」



「うるせーなっ お前はっ」




案の定、咲之助はキレた。