間を挟まず、すぐさま部屋に飛び込んで来た咲之助。
「どうしたっ 平気かっ」
咲之助がこんなに慌ててるのは、あたしの成長が止まってしまったからなのだろうか。
もしあたしに何の問題もなくても、今のように飛び込んで来てくれるのだろうかと、険しい咲之助の顔を見つめながら思った。
こんなに心配すると思わなくて、髪の毛ごときで「助けて」なんて言ったことが申し訳なく感じる。
言いにくくなってしまったが、取りあえず髪の毛が取れないのは困るので本当のことを言った。
「髪の毛が絡んで取れないの」
眉間に深いシワを刻んでいた咲之助の表情からいっきに力が抜ける。
そして咲之助はため息をついた。
「ったく、なんだよ」
そんなことかよ、と焦って損したとぶつぶつ言いながら近づいてくる咲之助。
「ごめん」
一応今のは感情を込めてつもり。でもなんだか中途半端で、結局謝る気がなさそうな「ごめん」だった。
「どこ」
あたしの横に来るとぶっきらぼうに問いかけて来た咲之助。
「ここ」
あたしは咲之助のほうに体ごと向けて、髪の毛の絡んだボタンをグッて引っ張って見せた。
