「蕾っ」
咲之助の手が肩に触れていよいよ体を揺すぶられる。
「起きろーっ」
ついにタオルケットが剥がされ、あたしは縮こまった。
頬に何かがツンと当たったかと思えば思いっきりつねられて。
これはもう寝たふりしててもしてなくても起きてしまうだろうと言う痛さだった。
「痛い痛いっ」
頬を引っ張られるように起き上がる。
やっぱり朝は容赦の咲之助。夕方近くなると心なしか優しくなるのに。
「よし、起きたな。 早く着替えろっ」
着替えろ、と言われた後には必ずハンガー付きで制服を投げつけてくるから。
目を瞑って腕をクロスし、顔面ガードの構えをした。
けど。
普段なら言ってからすぐに来るハンガーの衝撃がなくて。
ゆっくり目を開けて、クロスした腕から少し顔を覗かせると。
黒の英字が描かれた白のTシャツにジーンズを着た、なぜか私服姿の咲之助がいた。
「…え」
なんで制服じゃないの?って言う意味を込めて首をかしげるあたし。
伝わったようで、咲之助は「ああ、これ」と呟くとこう続けた。
「今日は学校サボるから」
「え?」
この時のあたしは、"?"が頭上にたくさん浮かんでいたと思う。
