それから何十分か経って、あたしはうとうとと二度寝しそうになっていた。
そしたら、階段を上がってくる足音がして。
ドアの前に人の気配が近づくと、コンコンてドアがノックされた。
「蕾、入るぞー」と言う咲之助の声。
これ、寝てるふりをするようになってから気付いたことなんだけど。
咲之助はあたしの部屋に入る前に必ずノックして一声かけてからドアを開ける。
あたしが寝てるの分かってるのにそうやって気を遣うあたり。
なんだか大人になったんだなって感じた。
カタンとドアノブの下がる音がすると、ドア一枚隔てて感じていた咲之助の気配が部屋の中に入ってきた。
「蕾ー 起きろー」
一回呼ばれたくらいじゃ起きない。
ちょっとやそっとじゃ反応のなかったあたしが、簡単に起きちゃったら怪しいから。
「早く起きろって」
まだ咲之助の口調は穏やか。
無視の度合いによって、これからどんどんヒートアップするのだ。
今日はどのくらいの声音になってから起きようか…。
