咲之助は、あたしの成長が止まってしまったことは知っているけど。
赤ちゃんが生めないかもしれないことと、記憶のことは知らない。
『何を言っても忘れてしまうのなら無断』って、見捨てられてしまいそうで怖かった。
本当は成長が止まったってことだってバレたくなかったけど。
咲之助は目の前で倒れるあたしを見てしまったから、何もなかったなんて言ったら逆に嘘だと見破られると思った。
目覚まし時計の音が微かに聞こえて、咲之助が起きたんだと感じる。
毎朝のことながら、なんだかこの時間はどきどきしている。
狸寝入りだから少し後ろめたい気持ちもあって、バレない自信はあるけど少し緊張するんだ。
もぞもぞ動いて目をぎゅっと瞑る。
早く来ないかな、なんて思いながら。
布団の隙間からわずかに差し込む淡い日の光りを瞼の裏に感じていた。
