高校生になったんだし、ウェーブな髪の毛でもいいかなって思ってたのに。
入学して1週間もたたないうちに、放課後の校門にいるおばちゃん先生に目をつけられてしまった。
それ以来、放課後までにストレートにしておく習慣ができた。
12月になった今でも、それは続けている。
「俺用あるから先行くわ」
咲之助は、あたしの髪をすっかりストレートにし終わると、お昼のパンを3口ぐらいで食べ終える。
空になったパンの袋をぐしゃっと握り、床から立ち上がった。
「どこ行くの?」
「職員室」
「あたしも行く」
「お前まだ弁当食ってんじゃん」
「だって、タケちゃんに聞きたいことがある」
「じゃぁ食べてから来いよ」
咲之助は、握ってた袋を少し距離のあるゴミ箱に絶妙なコントロールで投げ入れ、素早く保健室から出て行った。
「ちょっと待ってっ」というあたしの声は、たぶんギリギリ聞こえたはず。
なのに咲之助は聞こえないふりしたように振り返らなかった。
