大人になれないファーストラバー



あたしの場合、寝癖というよりクセ毛なんだけど。



生まれつきゆるいウェーブがかった髪質で、中学の時はパーマかけてるんじゃないかって誤解されてた。


そのせいで、生徒指導の先生に顔を合わせる度に注意された。







「サクも前髪アイロンかける?」


「今日は調子いいからいい」



そう言うと咲之助は、そろそろいい温度になったであろうアイロンを手に取る。




「ほら、後ろ向け」


「うん」






あんまり切ったことがないあたしの髪は、あと少しで腰に達する長さ。


自分でアイロンかけてたら筋肉痛で肩が上がらなくなった経験がある。




たぶんそれからだ。
咲之助が代わりにやってくれるようになったのは。






「サクー」


「なに?」


「サクはさくらんぼ好きだよね」


「好きだな」


「どのくらい好き?」


「分かんねえよ」


「なんで?」


「知らねえし」


「じゃぁ、さくらんぼとあたしだったらどっち取る?」


「は? 知らねえって」






咲之助の声の調子が低くなる。またしつこくしすぎたかも。