年季の入った青い自転車。今日一日でまた一段と味が出たように見える。
仕方なく降りて、ハンドルを握って押しながら歩くことにした。
キコキコキコキコ。
なんだか無償に気になる…
なんとかならんものかと一旦立ち止まり、しゃがみこんでタイヤの様子を伺う。
すると交差する針金とタイヤの向こうに坂が見えた。
それに、そこを登っている細い後ろ姿も。
傘らしきものを半回転ずつ右に左にくるくると回して歩いている。
少し離れているけど。
間違えていない自信がある。
なんてったって16年間もそばで見続けていたんだ。
あれは間違いなく、
「…蕾」
口に出す気はなかったのに、ポロっと出てしまう。
途端に胸がぎゅって苦しくなった。
たった数時間離れていただけなのに、やっと見つけたその姿に早く近づきたくてたまらない。
『好き』ってちゃんと意識したのだってほとんどついさっきなのになんで。
なんでこんなにたくさんの想いが込み上げてくるのだろう。
