大人になれないファーストラバー



髪の毛がすっかりしんなりして、青白い外灯が付き始める頃になっても蕾の姿は見つからなかった。


あとわずかで近道を抜けてしまうと言うのに、人の影すらない。




少し前に、自動販売機の前にいた野良猫を引きそうになってまた転落し、今度は右手首を痛めた。


ハンドルを握っているのもやっとで、またいつ転落するかも分からない。


もしかしたら自分は相当なドジなのかもと落ち込み始めると、ペダルを漕ぐ力が弱々しくなった。




雨で冷たくなった制服はじっとりと重く、鳥肌が立つくらい寒い。

なのに、なぜか額には汗が滲む。左肩の疼くような痛みのせいだと思う。





変な汗をかきながら、相変わらず立ったままのろのろと自転車を漕ぎ前に進む。



迷路のように入りくんだ民家の間を抜け、ようやく広めの道に出ることができた。




しばらく進むと、道の真ん中に一本のビニール傘が落ちていた。
針金の骨は折れまくって、取っ手の部分は銀色の棒が剥き出しだ。


いらなくなって捨てたんだなって、特に気にせず通り過ぎた。




ふと、キコキコという奇妙な音に気づいた。
出所を探るとそれは下のほうから聞こえてくる。



なんだか自転車全体が悲鳴を上げているようだ。