12月だっていうのに寒くない。むしろ熱い。
というか頭を冷やしたい。
ズボンの裾も折って、腕捲りもして。さすがに寒くてボタン2個開けのワイシャツは閉めようとした。
が、上から3番目のボタンが付いていない。
どうやら転んだ拍子にどこかに飛んでいってしまったようだ。
途端にどうでもよくなって、ワイシャツを開け放ったまま自転車を漕ぎ出した。
ワイシャツの中に風が通り抜けていく感じがする。ボタン一つでだいぶ差があることを痛感した。
いつもよりも体は冷えるが、いつになく気持ちは熱い。
間もなく本降りになり始めた雨。
蕾が一人で歩いてぽつりぽつりと歩いているのが目に浮かぶ。
ふと、少し向こうに相合い傘をしているカップルの後ろ姿が見えた。
もし蕾と葉山だったらどうしよう、と勝手に想像した。
通り過ぎ際にさりげなく傘の下その2人を覗くと、違う学校の制服を着た男女だった。
メガネをしている男のほうと目が合いそうになり、はっと前に向き直る。
その時微かに聞こえたのが、
「寒そうな格好」
と言う声。
改めて自分の格好を見ると、ほんと、寒そう。
つい口に出して言いたくなる気持ちがよく分かった。
