大人になれないファーストラバー



気のせいか、いつもよりも心臓の音が大きい。

そんな体の異変に驚いて、鼓動を沈めようと学ランの胸元を鷲掴みにした。




『好き』なんて、誰かが聞いていたわけでもないのに、なんでこんなに顔が熱いのだろう。



風邪かな、って思い込もうとしても、やっぱり自分で自分をごまかすのは無理がある。




どきどきがおさまらないまま、取りあえず立ち上がって倒れている自転車を起こした。



痛んだ肩を庇いながらサドルに股がろうとすると、またケータイが振動した。



一度深呼吸をして気持ちを落ち着けてから画面を見ると、葉山からのメールだった。



今度はなんだよ。と、眉間にシワを寄せてみたが。内心電話じゃなかったことにほっとしている。

今電話がかかってきたら、たぶん、動揺が伝わってしまうだろう。





メールを開くと、これまたシンプルに一行。





『なんとしても俺が先に見つけるからっ!!!!!!!!!!!!』




あ、違った。
『!』が多すぎて二行だ。




それを見て、葉山が同じようなことを言ってたことを思い出す。

さっきは"なんだそれ"って突っぱねたけど、今度は『俺が先に見つける』って思った。



すぐに恥ずかしくなって自分を自分で殴ったけど。