学校を出てすぐにある民家の間の細い道が俺が蕾に教えた"近道"。
再び自転車にまたがった時、ポケットの中でケータイが振動した。
それは葉山からのメールで。
タイトルは『蕾ちゃん発見』だった。
焦りすぎてボタンを押し間違えながらやっとメールを開くと、内容は一行だけのシンプルなもの。
『けど、人違いだった(笑)』
見た瞬間に腹立しさが最大に達して、即座にケータイを閉じた。
それはもうバチンて音がするくらい勢いよく。
そんなことならメールしてくんなって。
蕾のことを本気で好きなんだかどうだか、葉山の想いが疑わしく思えた。
これで葉山は頼れないヤツなのが確定して、自力で探すしかないと悟る。
ふと、雨のにおいが濃くなった気がした。
空が泣き始めるのも時間の問題だ。
"蕾のために"に、嫌気がさしていたのはついさっきのこと。
けれど今はもう、そんなことを考えるよりも先に、風を裂いて民家の間の近道を突き進んでいた。
