大人になれないファーストラバー



「俺のほうが先に見つけてみせるっ」


とか言い残して、葉山は駅のほうに一目散に駈けていった。



ああ、やっぱりめんどくさいやつ。
そう思わずにはいられなかったが、声には出さない。

なぜかって?

何度も言うけどめんどくさいからだ。






葉山の言葉を"くだらんっ"と突っぱねて、自転車を乗り捨て校庭に入る。



そろそろ部活が終わるようで、各部活が自分たちのテリトリーのトンボかけが始まっていた。




サッカー部の顧問に見つからないように端を通り、中央玄関を目指す。

玄関手前にある水道まで行き着くと、後ろから肩を叩かれた。



顧問じゃあるまいと思い振り向くと、さっきより砂に汚れた阿宮が立っていた。




「よ、橋本。」


「なんだ、阿宮かよー」



阿宮は、「顧問だと思ったろー」と、焼けた肌にひときわ映える白い歯を見せて笑った。




「つか、なんでまた学校にいんの?」




当然聞いてくるだろうと思っていた質問を、笑顔の余韻を残しつつ不思議そうな顔をする阿宮。





「いや、ちょっと蕾探してて」



蕾のやつ、もしかしたらひょっこり現れるかもしれないから、あんまり大事にしないよう控え目に説明した。