校門が見えるくらい学校の近くまで来ると。
ちょうどそこから葉山が出てきた。
もし暇していたとして、一番風呂のことしか頭になかったのなら、葉山に見つからないうちに逃げていただろう。
だが、今は蕾を探すことが最優先だから、今日散々な目に合わされた葉山にも、自から声をかけた。
「葉山っ」
自転車からコケそうになりながら降りて、葉山に駆け寄る。
「やや、橋本くんじゃないかっ」
妙な口ぶりは軽く無視して、なんの前置きもなく蕾のことを訊ねた。
「蕾見なかった?」
「え? 見たよ?」
「どこでっ」
「昼休みに教室で」
なはは、と笑う葉山。
「おい、ふざけんな。 蕾が行方不明なんだぞ」
そう言うと、葉山の顔つきが変わり、険しい表情になった。
そして声のトーンまで低くなり、
「それ、本当か?」
と真面目に聞いてきた。
「本当じゃなかったら今頃一番風呂楽しんでるよ」
葉山のことをつくづくめんどくさいやつだと思いながらため息混じりに言う。
「一大事じゃんっ 俺も探すの手伝うっ」
めんどくさいけど、今はそれは置いといて。
素直に助けてもらうことにした。
