「一緒じゃないです。 帰ってないんですか?」
『そうなのよ。いつもならとっくに帰って来てる時間なのに。』
こういうときは嫌な予感ほど当たってしまうものだ。
気のせいならいいが、空の色が、なんだか暗く怪しくなってきている気がする。
もし雨が降るとしたら、その前に蕾を探し出さないと。
あいつすぐ風邪引くから…。
「じゃぁ俺、もっかい学校行って見てきます」
登り始めた坂を、自転車の向きを変えて下りながら言うと。
『ごめんね。いつも迷惑かけて。私も家の周辺探してみるわ。』
と、蕾の親とは思えないほど(失礼)、気遣ってくれている様子が声から伝わってきた。
「いえ、平気です」
"俺が悪いのかもしれないし"と付け足しそうになってからやっぱりやめる。
今日は蕾を一人にさせてばっかりで、なんだか思い当たるふしがありすぎて後ろめたかった。
最後に『お願いね』と言って、会話が終わり電話を切る。
ケータイを閉じてポケットにしまい、坂を下りきって再び自転車にまたがった。
