大人になれないファーストラバー



しょぼいけど捨てられない自転車で佐伯の前を走り去る瞬間、




「お前、顔はいいけど性格無理だ」



って、ここに来るまでに溜まったストレスをその言葉に乗せて言い放った。




けど、俺が悪いところもあるから、




「誤解のことはごめん。 好きって言ってくれたことは嬉しかった。」





とも言っておく。



たとえ誤解のせいでそうなったんだとしても、それは初めて言われたことだったから。


どんな嫌なやつでも、初めて自分を好きって言ってくれた人だから。






「ありがとう」





それだけ言い残して、俺はその場を離れた。



そしてコンビニの駐車場から道路へ出る瞬間、





「ちょっとっ 待ってよっ 本気で好きんなっちゃうじゃんっ」



と、なんだかけたたましい声が後ろから聞こえた。


本気じゃなかったのかよって、軽くため息が出る。






まあ、結局。
女っていう生き物はなんだかよく分からない。
佐伯にしても、蕾にしても。





サドルに座らないで立ったままペダルを漕いで。
山から光だけが見える、頭も見えなくなった太陽を見つめた。


それはもうまったく眩しくなくて。
目を細めることもせず、




「分かんね」



って思わず心の声が漏れた。