コンクリにこびり付いた餡は取りきれなかったが、一通り拾い上げて袋に詰めた。
そんな俺のことをどういう目で見ていたかは知らないが、拾っている間佐伯は何も喋らなかった。
袋の口をきゅっと縛り、立ち上がって佐伯と向き合う。
「な、なに」
睨んだつもりはないが、両腕を胸の前でくっつけてたじろぐ佐伯。
「ほら、食べもん粗末にしたんだからせめて片付けはちゃんとしろ」
袋を佐伯に突きだして、ますます罵られそうなことを言う。
だが、もうこんな女になんと言われようがどうでもよくて。
ズイッと押しつけるように袋をさらに差し出す。
佐伯は俺の目とそれを交互に見て、嫌そうに受け取った。
佐伯はかなり不満そうだったが、俺は何も言わず、餡の付いた手をパンパン払って自転車の支えを上にあげてまたがる。
ペダルに足を掛けると、さっきより軽かった。
