「でも俺、今部活忙しいし、彼女もいらない…」
「はあ!? じゃ幼なじみは特別なわけ!? あたしはどうでもいいわけ!?」
ずいずいと迫ってくる佐伯。
なんでそこで蕾が出てくるんだ。と、ちょっとむっとした。
「ちょっとっ ただじゃ帰さないんだからぁっ」
「じゃぁ、どうすればいいんだよ」
少々投げやりに答えた。
もとは体調悪いって言うから送ってくっていう主旨だったはずだ。
なのになんでこんなことになってんだ。
「うーん…、それじゃこの落としたやつ食べて」
「は?」
「おんなじくらい恥ずかしい思いしてよっ じゃなきゃ気がすまないっ」
落ちた餡まんに再び目を落とすと、可哀想なほどぐちゃぐちゃで。
こんな女に買ってやったばかりに餡まんにまで被害が及んで、なんだか申し訳ない気持ちになった。
蕾がこれ見たら絶対泣くんだろうなと思いながら、餡まんの隣にしゃがみ込む。
しばらく無惨な姿を見つめて、散らかった餡やら皮を拾った。
それを口に運ぶなんてことはやっぱり無理だから。
同じく投げ捨てられて袋を拾い、それを入れ始めた。
