大人になれないファーストラバー



ガムと餡まん1個ずつが入った袋を提げて、バチッと静電気を受けながらドアを押す。



外に出ると、吐いた息が白く。
太陽は半分以上が山に沈んでいた。




ゴミ箱の前を通って自転車を止めた場所へ向かう。


まず最初に佐伯が乗ってるはずの後部座席を見ると、その姿はなくて。

一瞬ほっとしてから、すぐに焦りが込み上げてきて慌てて自転車に駆け寄った。




「佐伯っ」




名前を呼んでみると、下の方からズボンの裾をくいっと引っ張られた。





「ここだよーん」




声がして、後ろを振り返って目線を落とすと。
しゃがみ込んだ佐伯がいた。





「ごめん、遅くなった」




そう言って袋からガムを取り出して。何の説明もなしに佐伯に餡まんを袋ごと差し出した。




「何?」と上目使いに聞いてくる佐伯から目を逸らして。


「いや、寒かっただろうと思って」

と、素っ気なく言った。




佐伯は「なんだろなんだろ」と言いながら、ガサガサと袋を漁る。




「あっ 肉まん?」



白い息を吐きながら、弾んだ声で言った。



「あ、餡まん」



肉まんのほうがよかったのかもと思いつつ、訂正しておく。