「コンビニ~? 咲之助なんか買うの~?」
「そおっ ガム買うのっ」
自分でもらしくないしゃべり方でそう言って、「ああ俺、我ながら焦ってるわあ」と思う。
キキキーとタイヤが鳴くくらいいきなりブレーキをかけて。
コンビニの出入り口は避けて、なるべく駐車場の端に自転車を止めた。
「ちょっと待ってて」
後部座席の佐伯に「ついて行きたい」と言う間を与えず、俺は素早く自転車を離れた。
ふと顔を上げると、入口の横にたむろしてる同じ高校の制服を着た女子たちと目が合った。
もしかしたら、佐伯を自転車に乗せてるとこ見られたかも。
蕾といる時には人の視線なんてまったく気にならないのに。
今日はなんだか人目を避けたい。
見るなーって言いたい。
もちろん口には出せないけど。
さりげなくその女子たちから目を逸らして、寒さをしのぐように肩をすぼめてコンビニに入った。
中へ入ると、縮こまってた体が暖かさでいっきにほぐれる。
佐伯から離れたことでもほっと肩の力が抜けた。
が。顔の力までぐだっと抜けた瞬間窓を見ると。
そこには笑って手を振る佐伯の姿が。
その姿に愕然とし。
一刻も早く誤解を解かないと自由はないと思った。
