大人になれないファーストラバー



「離せっ 事故るっ」




もう運転しながらの会話は危険な気がする。

目の前に信号が迫ってきて、その先にあるコンビニで訳を話そうと思った。





「あっ もう咲之助って呼び捨てでいいよね~っ」



「ちょっと待てってっ」





厄介なことになって来たぞ。

いや、目の前で佐伯が倒れた辺りからもう厄介事は始まっていたけど。





横断歩道を軽く逸れて道路を渡る時、通り過ぎ際に車の運転手と目が合って。



「カップルじゃないですからーっ」


と叫びたかった。





そんな俺をよそに、佐伯はますます密着してくる。




「咲之助、だいすきよ」




囁くように言うと、終いには耳に息を吹き掛けてきた。
思わずぞわっと鳥肌が立つ。寒いからじゃない。佐伯のせいだ。





「うん、分かったからもうちょい離れろ」




言った瞬間、背中を上から下までツツツーとなぞられ、ますますゾクゾクした。



俗に言う、セクハラってやつ?


いや、でも佐伯は両思いだと思ってるんだから仕方のないことなのかも。





「くすぐったいー?」




と、きゃはきゃは騒いでる佐伯は無視して。
自転車がバラバラになるくらい全力で、コンビニ目指して一心不乱にペダルを漕いだ。