大人になれないファーストラバー



あんなに頑張って点呼直前に部活に滑り込んだのに。
呆気なく早退…。




顧問に早退することを言いに行くと、タイミングよくくしゃみが出たもんだから、風邪と勘違いされて。

「ゆっくり休めっ 早く帰れっ」なんて、半ば強制的に早退させられた。




あのくしゃみは、風邪じゃなくて、花粉でもなくて。
誰かに噂されたとかその辺だと思うんだけど。




ああ、どうせなら早退にも厳しい顧問がよかった…。




そう思うと、逆玉に乗ってささっといなくなってほしい願望は一層強くなっていった。






「咲之助くん、ごめん。あたしのせいで…」



自転車を取りに駐輪場へ向かう途中、佐伯が再び謝罪を口にした。




「もう気にすんなって」




俺は自転車の鍵を指でくるくる回しながら言う。

あんなに送って欲しそうなオーラ出しといてまだ謝るのかよと思った。





正面の山のてっぺんにさっきよりも近づいた太陽を見つめ。
なんだか慣れないツーショットだから、目立たないよう早く日が暮ればいいと願う。




とぼとぼと、佐伯に歩調を合わせながら歩いて、古ぼけた自分の自転車を見つけた。
オレンジ色を斜めに浴びながら黄昏ていたそいつを自転車の列から引き抜き、鍵を差し込んだ。