佐伯と言えば、シンデレラ女1号だ。(蕾は2号。)
「ごめんなさい」と言いつつ俺から離れた佐伯から、昼休みよりも増して強烈な香水のにおいが漂ってくる。
鼻の穴にまぶたがあったら閉じてしまいたいと思った。
「へ、平気?」
なるべく呼吸を浅くし、媚薬のような強烈なにおいを吸わないようにして聞いた。
「うん、大丈夫。 てゆうか昼休みと言い、何回も助けてもらっちゃってごめんねっ」
ぬらぬらと輝く唇が、つっかえることなく言葉をつむぐ。
「いや、別に」
そんな唇には、たとえ彼女であってもキスはしたくないなと思い、後ろに一歩引いた。
「ほんとにごめんなさ…」
佐伯の声はだんだんと小さくなり、語尾が聞こえなかった。
刹那、佐伯はパタリと地面に倒れ込んだ。
「え、おいっ」
慌てて俺もしゃがみ込む。
昨日や一昨日が雨だったら、こんなところに倒れたら泥まみれだっただろう。
ここ最近は快晴の日が続いていたため、乾いた砂の上だったのが幸いだ。
綺麗に倒れ込んだ佐伯の肩を揺すると、佐伯はうっすらと目を開いた。
