大人になれないファーストラバー



「観月が校舎に入ってしまった」と言う阿宮の発言に。
5ミリくらいしかない眉を寄せ、切なげにため息をつく顧問。


ジャージがかさかさと音を立て、まるっていく背中。





「先生っ 早く部活やりましょっ 点呼取りましょうっ」




そんな、らしくない後ろ姿に向かって、今度は俺が大きめの声で言う。
まるで最初からいたように、ここで存在をアピールしておく。





「ああ、そうすっか」





猫背がまたぴしっとまっすぐになった。
それはものさしでも差し込んでいそうな程のまっすぐ具合で、なんだか不自然だ。





拳を握ると出っ張る手の甲の骨の辺りを包帯でぐるぐるに巻いた手で。
顧問は賞状を渡す時のように名簿を持った。





手の甲に包帯って。
ボクシングでもするんすか。
ここサッカー部ですけど。




…と。おそらく誰もが部活中に必ず一回は心の中で囁いているに違いない。




気付かないふりをしているだけで、ツッコミたいことは他にも山ほどあるが。

取りあえずそこだけはなんだか無視できず、ツッコミをせざるを得ないのだ。