ヤンキー顧問のつりぎみの目が観月アヤを捜索しているうちに、俺は部員の集団のなかにさっと紛れ込む。
「あ~観月校舎ん中入っちゃいましたよ」
すかさず阿宮が大きめの声で言う。
本当はそこにはいない人物をいつまでも探させるのは危険だ。
何回かこのミスで怪しまれたことがあったから。
あと、必ず真顔で言うこと。
この2つが守れていればヤンキー顧問は完全攻略できる。
入部して12ヵ月。
先輩に教えられながらこのような対策を編み出し、俺たち部員は結束力を高めてきた。
…って。別にふざけているわけではないぞ。
教師と生徒という壁を越え、ゆくゆくはヤンキー顧問に春が訪れればいいと、ささやかに願っているし。
ただ、顧問の不器用さが部内に伝染して。未だに部員全員彼女なし。
だからとっとと逆玉にでものって、引退していなくなってほしいのが全員の本音。
ひどい部員たちだと思うが、これが現状なのだ。
