20.5しかない革靴。
自分の足と見比べてみると、その小ささがよく分かる。
あいつ、背もちっこいくせに足もこんなサイズなのかって、その靴を見つめながらしみじみ思った。
ふと。さっきの場面がよみがえる。
上履きをとってやらなかったことを思い出すと、ズキッと胸が痛くなった。
革靴を蕾の靴箱に戻し、足が無意識にあの階段に向かおうとする。
が、すぐに歩みを止めて立ち止まる。
今戻ったら部活の点呼取りに間に合わなくなる。
またそうやって蕾のために自分を犠牲にするのか。
別に両手にバケツで恥じさらすなんてたいしたことじゃないけど。
"蕾ため"っていうのがなんだか腑に落ちない。
自分で思ってたよりも、俺ってけっこう頑固なんだろうか…。
すっきりしかけていた思考回路がまたごちゃついてくる。
ダメだダメだ。
今は部活が最優先だ。
親父がよく言ってたじゃん。
"物事には優先順位があるんだ"って。
チビの頃はそんなの知るかって思ったけど。やっぱり親父の言う通りだ。
取りあえず、点呼が始まる前に気付かれないようにあの中に入り込まなくては。
悪循環を繰り返しそうになる思考を無理矢理中断させて。なかなか入らない踵をねじこんで靴を履き、玄関を出た。
