大人になれないファーストラバー



早足で歩いて玄関まで行くと。
校庭は部活をやっている生徒でもうすっかり埋まっていた。




サッカー部のいつもの集合場所、サッカーゴールの前に目をやれば。
基礎練が終わった後にある顧問の話しが始まっている様子だった。






…やべぇ。




顧問に遅刻したのがバレたら厄介だ。絶対に怒鳴られる。
それに、両手にバケツを持って校門横に立ってると言う恥さらしな罰を受けかねない。
(両手にバケツとかいつの時代だよ。ったく。)



早退なら許すのに、遅刻だとネチネチネチネチ怒りやがる。
さすがにもう抗体ができたけど。嫌なことに変わりはない。






不味いなと思いながら外の様子を見つつ、手元を見ずに下駄箱に手を伸ばして靴を取り出す。


すると、パコンと別の下駄箱に当たり、誰かの靴が片方落ちて来た。



ぱたっと音を立てて、敷いてあるすのこに着地する。




革靴だから、たぶん女子のだ。男子はほとんど運動靴だし。





拾い上げて、片方しか靴が入ってない下駄箱を探すと。






"名取 蕾"


という名前のシールが貼られた四角い靴入れに行き着いた。