大人になれないファーストラバー



階段に差し掛かると、半分ぐらいの段に上履きが脱ぎ捨ててあって。
踊り場には片方しか上履きを履いてない蕾の姿が。






立ち位置は上と下逆だけど、こんな光景昼休みにもあった。

女ってやつはどうしてこうも回りくどくて、どいつもこいつもシンデレラになりたがるんだろう。


呆れてまたまたため息が出た。




泣いたことがバレないよう、平然とした顔でズボンのポケットに手を突っ込み、階段を降りる。





こんなことになんの意味があるのか、理解できず。
脱ぎ捨てられた上履きがある段に来て足を止め、しゃがみ込んで言った。






「早く帰れ」






それだけ言ってまたすぐ立ち上がり、2段抜かしで蕾がいる踊り場までたどり着く。


目が赤いといけないから視線が交わらないように蕾から顔を逸らて。

くるっと身を翻し、一階まで続く階段も同じく2段抜かしで降りた。






「サクっ」





階段下からすばやく離れて、壁で蕾の姿が見えなくなる。
直後に声だけが響いてきた。