去っていく俺の背中を蕾が見ていると思うと。
早く目の前からいなくなりたかった。
走ろうかと思ったら、後ろから再び足音が聞こえ始めて。
また袖を引っ張られるんじゃないかって身構える。
走っているような足音はどんどん近づいて来て。
今度はどんなリアクションをとったらいいのか分からず、少し焦る。
"来た。"
気配を間近に感じた瞬間、すっと横を通り過ぎていく蕾。
昼休みにストレートにした髪がさらさらと波打っている。
"次は真っ正面からの足止めか"と思ったが、それでもなくて。
角に差し掛かると、蕾はそこを曲がった。
あそこには階段がある。
何を考えているのやら。
まさか今度は階段で足止めか?
涙が滲んで熱くなってしまった目を落ち着かせながら、階段までの廊下を歩いた。
微かにでも泣いたなんて、悟られたくなかった。
