その日を境にあたしの単純な繰り返しの生活に一筋の光が差し掛かった。

彼女の名前は、『准』と言う。呼び名に当惑するあたしにただそれだけ教えてくれた。

准は歌舞伎町二丁目でも有名なバーテンのオーナーだった。従業員も多く毎月必ず新人が店の扉を叩き働きたぃと頭を下げると、少し自慢気に毎回語る。
准がバーテンを立ち上げたのは丁度三年前になる。
詳しくゎ語らないが、田舎から傘1つで上京して来たと、一つの都市伝説並に噂された。
この世界に足を付ける前は、王手企業の取締役を勤めていたことさぇあるらしい。

世話焼きで気配り上手な天秤座。
引き締まった筋肉美からは過去にスポーツマンだった証拠かも知れない。
しかし、准の過去を知る者はいない。
准が昔の話をする時、バーボンを傾けながら…寂しい目をする。何処か遠くを見通す様な焦点の合わない悲しい目だ。

だから、聞く者はそれ以上何も掛ける言葉さぇ見付からないんだ。