「おおっ、すげえな、豪華!」
松岡が一番に歓声を上げた。小柄な体で大袈裟なリアクションをとる。
確かに豪華だ。テレビなどでよくみるイメージのままの装飾。そして派手な赤い絨毯が敷かれていた。
「おい中里、大丈夫か?」
中里が細かに震え何処か青ざめていることに気づいた。
「ここに居ちゃ駄目。帰ろう…!」
中里は小声で、だが真剣に呟いた。その顔は必死の形相だった。おかしい。中里は幽霊云々のオカルトは信じていないし、怖がった試しもない。俺は異常を感じた。
「なあ、奈々ちゃん。悪いけど俺らは帰るよ。中里の気分が悪いらしい」
俺はまだ扉の前に立っていた奈々に向かって言った。周辺から様々な声が聞こえた。
「逃げるのか?」
「熱いね〜」
「本当はお前が怖いんだろ?」
奈々の笑顔が崩れた。
