胸を押して離れようとしたけど、
余計に強く抱き締められた。
なんで?
流衣にこんな風に抱き締められたのは初めてだった。
「ちょ、苦しい。」
「我慢しろ。」
殺す気かよ。
「…………何で倉庫に来ない。」
「特に理由は無い。」
「あの男か?」
「意味分かんない。」
「いつから知り合いなんだ。」
「最近。」
「やっぱそうじゃねぇか。」
「時期が重なったのはたまたま。」
「…………そうか。」
流衣はそう言って離れた。
「何なの。」
言いたい事があるならはっきり言えよ。
いつもと違う流衣にいらいらする。
「お前、あの男が誰だか分かってんのか。」
「だからぁ。」
「名前の事を言ってんじゃねぇ。」
何なの?
「あの男の素性だよ。」
………何、言って……。
「聞いてんのか。」
「……聞いてるよ。」
流衣の視線が痛い。
顔を上げられなかった。
「あいつは"黒風"の幹部。しかも、総長の弟だぞ。」
知ってたんだ……。
そりゃ、知ってるよね。
敵の幹部くらい。
「その反応は知ってたんだな。」
「…………。」
「知ってて関わったのか。」
「…………。」
「おい。」
「だったら何だよ。」
「ぁあ゛?」
あたしは顔を上げた。

