「どうした。」


頭上から聞き慣れた声が聞こえた。



顔を上げた。



「流衣……。」



「どうした、そんな所に座って。」



「……………。」



「親父に何か言われたのか。」



はっ!


流衣には葛城さんに言われた事を気づかれちゃいけない。



「な、なんでもない。」



あたしは勢いよく立ち上がった。



「そうか。」



流衣は壁に寄っ掛かり、煙草を出した。



「あたし、行くわ。」



そう言って、流衣の前を通り過ぎようとした時、



「なぁ。」



流衣のいつもより低い声によって、足を止めざるをえなくなった。