バイクをクラブ『GHOST』の前に止めて、扉を開けた。
騒がしい音楽。
薄暗い店内。
異様な臭いが漂ってる。
あたしの大っ嫌いな場所。
「華奈ー!」
店の奥で和治が手を振ってるのが見えた。
周りの奴等はあたしに気づいて、頭を下げてくる。
女は悔しそうに、見てくる。
奥へと足を進めていると、もの凄い、視線を感じた。
「何?」
あたしはその女を横目で見た。
「べ、別に。」
「てめぇ、誰に向かって口聞いてんだ!?」
1人の男が女に叫んだ。
「輝。」
あたしは、そいつの名前を呼んだ。
輝は下っ端の中でも、幹部の次に着く奴等の中の1人だ。
「でも……、」
「良いって言ってんの。」
「はい……、分かりました。」
あたしは、女に近付いた。
「な、何よ。」
いや、それはこっちの台詞だし。
「あんた、見かけない顔だね。」
ここのクラブは"黒桜"に入っている奴か、"黒桜"と同伴で来るか、どっちかじゃないと入れない。
だから、女でも多少顔見知りの奴等が多い。
大抵の奴はここのルールを知ってるはずだ。
それは、
"華奈"と呼ばれる女には、関わらない事、
ある程度態度をわきまえる事。

