葛木愛は中学三年生の至って普通の女の子だ。

部活はテニス部、成績は中の上、今のクラスでは学級委員長を務めている

性格は何にでも一生懸命な頑張り屋、しかし頭の硬い優等生というわけでは無いので男女共に人気がある。

一つ、この年頃の女の子として変わっている点を挙げるなら、あまり恋愛に興味が無いところだ。

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 六月の教室はジメジメして居心地が悪い。

「愛!!」

勢い良く名前を呼ぶのは親友の友香だ。

「何、どうしたの」
「聞いた!?二組の佐山さんと五組の加藤くん付き合ってるんだって!!」
「ふーん…前から噂あったもんね」

友香は予想外の反応に少しあきれた表情になる。

「リアクション薄っ!!愛って本当こういう話に興味無いよね」
「うーん…なんか苦手なんだよね」

自分のそういう性格に愛自身も少し困っていた。

三人兄弟の長女でしっかり者の愛にとって、まだまだ子供っぽい同級生の男の子たちは、どうしても弟みたいな存在にしか見えなかった。

友香は次のターゲットに情報を漏らしに行った。

私もいつか、みんなと同じように恋愛でドキドキしたりワクワクしたりする日が来るのかな?

愛は教室の壁にあるラクガキの相合い傘を見ながら思った。