満月の夜


パタンッ


ズキッ!


「うっ…」


いたっ
何、この痛み…


医務室を出た瞬間、いきなり鎖骨辺りに痛みが走った。
まるで焼けるような痛みに、樹梨亜はうずくまって鎖骨を抑えた。


しばらくすると、痛みはなくなった。


「いったい何だったの…」


鎖骨が痛くなるなんて…
胸の痛みとは違うし…
屋敷に帰ったら見てみよう。


不思議に思いながらも、樹梨亜は鞄を取りに教室に向かった後
校門で迎えが来ている伊吹家の車に乗った。


その時に見た満月は、既に半分が赤色に染まっていた。


不思議よね。
普通の人間には、あの不気味な満月の色が見えないなんて。


あれが完全な赤月になれば
私に流れる吸血鬼の血が真の姿を現す。