【完】宛先不明のラブレター



直感だった。

顔はよく見えないのに、そこにいるのは果枝だと信じて疑わなかった。


俺の口からは、するりと、3年の間口にすることはなかった名前を口にした。




ゆっくりとベンチの方に歩み寄り、ベンチに座っている人物の顔がはっきり見えたところで止まった。

ベンチまで、あと2、3歩という距離だろうか。




…夢を、見ているみたいだった。

あの頃より少し大人びた、愛しくて、会いたくてたまらなかった相手が、俺の目の前にいる。