茉莉の名前を口にして、頭に今目の前にいるのは誰なのか、俺が愛さなければいけないのは誰なのか、…幸せにしなくちゃいけないのは誰なのかを、認識させようとしていた。 あの日から、茉莉が抱けなくなったのは、罪悪感だけじゃない。 俺の体に残る果枝の感触を、忘れたくなかったからだ。 無意識のうちに、俺は果枝を忘れまいとしていた。 忘れたくなかった。 それは、今も変わらない。 …けれど、俺はそのまま立ち止まってはいられないから。 俺は、先に進まなければいけないから。