「その、聡は…さ?」 「うん」 「えっと、…く、薬指に…」 「薬指?」 「…結婚指輪してないのかなぁ、なんて…」 果枝に言われて、自分の左手の薬指を見た。 俺は、茉莉と結婚式をした日以外、結婚指輪をしたことがない。 指輪は、箱に納められたまま俺の机の引き出しにそっとしまってある。 つけない理由は、仕事に行って毎日つけたりはずしたりを繰り返すとなくしそうだから、と茉莉には言ってある。 茉莉も、同じ理由から指輪をつけていないから納得してくれていた。