家へと帰ってきたものの。


「そういやそうだった……」


忘れていたわけではないけれど。
あまりにショックな出来事が起きすぎて。


実家のイベント一瞬忘れてた。


そう「涅槃会」。

このための団子作りで家はフル回転。
台所も大量の団子に占拠されている。


「真理矢、おまえも手伝えや!!」


副住職の兄貴がそう吠えた。

お手伝いはしたいけど。


今日はちょっと無理っすよ、お兄様。


「つーか、なんだ、その手荷物」


オレが抱えるものを見て、兄貴がまた吠える。


「あー。材料」

「なんの?」

「……ティラミス」

「んじゃ仕方ない。いいわ。おまえそれ、離れで作ってろ」


ちょいちょいちょいっ!!

ちょいっと待った、お兄ちゃん。

なんでまた、そんなに簡単に納得すんの?