「もう帰るのか?」





静かな部屋に響く男の声。
起きたばかりなのか少し声が

かすれている。






『...』





私は男の質問に答えることなく

ドアの前に立ったまま。





するとベッドにいた男が

ため息をつきながら私の元に

近付いて来る。





そして後ろから私を抱き締め

耳元で呟く。





「まだ美樹と居たい...
だから帰るなよ。」





男はそう言って私の耳に優しい

キスをしてそれを徐々に下へ

下ろして行く。




キスが首筋に来た時に私は男に





『やめて。』




と無表情で言う。





すると男は頭を軽くかきながら

またベッドに戻って行く。




『私、帰るから。

じゃあね。』





それだけ言って男の部屋を出る。






『寒っ...』





時刻は深夜2時を回った所。


冬のこの時間が1番冷える。



高校生がこんな時間に街中を

うろついていたら道行く人は

不審に思うだろう。




ジロジロ見られるのはもう慣れた事。



だから別に平気。



きっと誰とでも寝れるのも
私にとってはもう日常になってる。




それに慣れてる自分がいる――。



こんな怖い事、他にない。