その時、三田の耳に階下で唸り声にも似た騒ぎ声が聞こえた。
 
 
「橋口…いや沖田だっけ、あの娘もお前の友達だったよね。何度も言わせるなよ、早く抜け。抜かなきゃあの娘も助からないかもよ。」
 
 
―くそっ!!くそぉっ!!
 
 
三田は絶句した。仮に今自分がこの場をなんとか切り抜け助かったところで橋口は助からないかも知れない。だが何もせずにやられるよりはやるしかない。決心し、短刀を抜いた。
 
 
その瞬間―。
 
 
「おっ!?おおおぉっ!!?」
 
 
それは、引きずり込まれるのとは全く違う、むしろ得体の知れない何かが短刀から這いだし、手から、腕から、そして躰へと、染み込み、それに伴って徐々に普段眠っている筋肉繊維が一本また一本、と解放されていく感覚。
 
 
―これなら橋口を…。
 
 
「来い佐助!!今こそ450年前に真田から受けた我らが雪辱を晴らしてやる!!」
 
 
「あん?そんなの知らねえよ!!いくぜ遠藤…いや、半蔵!」
 
 
三田、もとい猿飛佐助と遠藤もとい服部半蔵はここに互いの火花を散らし、眼前の敵に向かい走り出した―!!